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香港の法曹界が「かつら」で大論争 日本の法廷にも「服装規定」があるか

2013年05月16日 20:50  弁護士ドットコム

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「我々も法廷で立派なかつらをかぶりたい!」「かつら着用は特権だ!」――香港の法曹界でいま、こんな大論争が起きている。香港の弁護士は、法廷で弁論を担当する「法廷弁護士」と、主に代理人として契約作成などにあたる「事務弁護士」に区別される。そのうち伝統的な英国風の「かつら」を着用できるのは法廷弁護士だけなのだ。


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ウォールストリートジャーナルなどによると、これに対して事務弁護士側が最近、「我々にもかつら着用を認めろ」と声を上げた。その背景には、事務弁護士の業務の領域が拡大し、一部の訴訟については法廷に立てるようになったことがあるという。この「我々にもかつらを!」という要請は裁判所によって退けられたが、事務弁護士側は「かつらを付けた人物がより優れていると、陪審員に認識されかねない」と不満を表明しているそうだ。


日本から見ると、なんとなくコミカルな論争にも思えるが、実際の裁判に影響する可能性も考えると、黙ってはいられないということだろう。日本の法廷では裁判官は黒い「法服」を着るのが通例となっているが、弁護士について服装や身だしなみに関する規定はあるのだろうか。調べたところ、「かつら」に関するルールはないようだが・・・・。田沢剛弁護士に聞いた。


●はちまき、ゼッケン、たすき、腕章などはNGが多い


「法廷でのマナーについては、『法廷等の秩序維持に関する法律』というそのものズバリのルールがあります。この法律には罰則もあって、裁判所の命令に従わなかったり、裁判を妨害したり、裁判所の威信を傷つけた場合には『20日以下の監置』や『3万円以下の過料』、もしくはその両方が科されてしまいます」


——たとえば、どんな服装がダメなのか?


「服装などの注意事項については、一般的に、それぞれの裁判所が法廷におけるマナーを定め、掲示しています。具体的には『服装を整えて法廷に入って下さい。はちまき、ゼッケン、たすき、腕章などは着用しないでください』などと書かれていることが多いです。被告や証人への影響に配慮するということだと思います。


なお、真偽のほどは定かではありませんが、暑い地方の裁判所では、暑さをしのぐために、法壇の下に水を入れたバケツを準備していて、裁判官が審理の最中に素足を突っ込んでいることもあったとかなかったとか・・・・」


さきほどの「法廷等の秩序維持に関する法律」は、法の権威や法廷の秩序、裁判の威信などを守ることが目的とされている。ということは「皆にばれなければ大丈夫?」なのかもしれないが、くれぐれも裁判官のみなさんには、審理中にバケツをひっくり返す、なんてことのないようにお願いしたい。


(弁護士ドットコム トピックス編集部)



【取材協力弁護士】
田沢 剛(たざわ・たけし)弁護士
1967年、大阪府四条畷市生まれ。94年に裁判官任官(名古屋地方裁判所)。以降、広島地方・家庭裁判所福山支部、横浜地方裁判所勤務を経て、02年に弁護士登録。相模原で開業後、新横浜へ事務所を移転。得意案件は倒産処理、交通事故(被害者側)などの一般民事。趣味は、テニス、バレーボール。
事務所名:新横浜アーバン・クリエイト法律事務所
事務所URL:http://www.uc-law.jp