2013年05月15日 15:21 弁護士ドットコム
歩きながら携帯でメールをしていたら罰金――最近、日本ではスマートフォンをいじりながら歩いている人を多く見かけるようになったが、アメリカのニュージャージー州には「歩きスマホ」を規制する条例があるという。少々厳しすぎるようにも思えるこの条例だが、歩行中の携帯電話の使用にはかなりの危険が伴うことも事実だ。
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たとえば、スマートフォンは画面が大きく、操作もタッチパネルを用いるものがほとんど。「歩きスマホ」をしていると視野がかなり狭くなり、他の歩行者との接触や転倒の危険性が増す。特に、駅のホームや階段での接触や転倒は、重大な事故につながりかねない。実際に、日本でも携帯電話の使用が原因のホーム転落事故が何件も起きている。
そうした危険性から、日本でも「歩きスマホ」の規制を求める声は少なくない。今年4月にヤフーがおこなった意識調査では、約5万人の回答者のうち75%が、「規制が必要だと思う」と回答している。仮に日本で「歩きスマホ規制」を導入するような動きになった場合には、どのような問題点があるのだろうか。「スマホ愛好家」の顔も持つ落合洋司弁護士に聞いた。
●「歩きスマホは迷惑で危険な行為だが、ほかにも同じような行為はたくさんある」
落合弁護士によると、「『歩きスマホ規制』の導入を考えるにあたっては、(1)法令で規制するのが妥当か、(2)規制する場合に何をどの程度規制するか、(3)罰則をどうするか、などについて検討されるべきです」という。
「まず、(1)歩きながらスマホを使用する行為を規制することが、行動の自由への制約として妥当かが問題になります。
たしかに、歩きながらスマホを使用する行為は、危険であると同時に他人にとって『迷惑な行為』ですが、それを言えば、ほかにも同種の行為はたくさんあります。歩きスマホだけをことさら取り上げて、あえて規制するとしたら、『公平性』と『妥当性』を問われることになるでしょう」
落合弁護士の説明は続く。
「次に、(2)『他人への迷惑』をどこに求めるか、つまり何を要件とするかは、明確で合理的なものとして決めておく必要があります。
たとえば、山の中の人通りもない道路で歩きながらスマホを使用する行為を規制すべきと考える人は少ないでしょう。したがって、立法技術として、かなり工夫が必要となると思います」
●「歩きたばこ」の規制が一応、参考になる
では、(3)罰則はどうなるのだろうか。一説によると、ニュージャージー州では罰金は85ドルだということだが・・・。
「軽微な違法行為を処罰する軽犯罪法で、法定刑が『拘留(1日以上30日未満の身柄拘束)または科料(1000円以上1万円未満の金銭納付)』とされていることが参考になります。
また、たとえば『歩きたばこ』については、『過料』が制裁となっているケースがよくあります。このように刑罰とせず、行政罰である『過料』を条例で科す方法もあるでしょう」
落合弁護士は「このような諸点を慎重に検討し、議論を尽くして結論を出す必要があります」とまとめている。
とはいえ、駅のホームや階段などで、前を見ずに歩きながらスマホを使うことはやはり危険だし、他人に迷惑をかける可能性はある。そこで、「ホームで歩きスマホはしない」などの自分ルールを作って、スマホをいじるのを控えてみてはどうだろうか。
(弁護士ドットコム トピックス編集部)
【取材協力弁護士】
落合 洋司(おちあい・ようじ)弁護士
1989年、検事に任官、東京地検公安部等に勤務し2000年退官・弁護士登録。IT企業勤務を経て現在に至る。
http://d.hatena.ne.jp/yjochi/
事務所名:泉岳寺前法律事務所