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裁判所の「競売物件」 落札後に「ごめん。やっぱり払えません」したらどうなる?

2013年05月10日 16:40  弁護士ドットコム

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競売にかけられた在日本朝鮮人総連合会(朝鮮総連)中央本部の土地・建物について、鹿児島市の宗教法人「最福寺」が45億1900万で落札したが、その後の資金調達に失敗し、取得を断念したことがわかった。同寺が9日、報道各社の取材に対して明らかにした。


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同寺は落札後に「金融機関から融資を断られたため、支払いのめどが立っていない」と発表し、話題になっていた。納付期限は5月10日で、支払いがなければ最福寺の落札資格が取り消され、競売手続きは仕切り直しになる。


実際には払えないような金額で入札し、後で「交渉」する。そんな「ダメもと落札」が許されるとは思えない。競売で落札した物件をキャンセルするケースはしばしばあるのだろうか。また、法的にはどんなペナルティが課されるのだろうか。元不動産の営業マンで、競売の実態にも詳しい瀬戸仲男弁護士に聞いた。


●落札額を払えないと、事前に納めた「保証金」が没収される


「競売のキャンセルはたびたびあります。銀行ローンをあてにして入札したのに、ローン審査が通らなかった事例が典型です。最福寺の件も、同様の事案と言えるかもしれません」


瀬戸弁護士はこう指摘する。では、落札額を払えなかった場合、ペナルティはあるのだろうか。


「落札後の指定日までにお金を払えない場合、入札をする際に納める『保証金』(民事執行法66条)が裁判所に没収されます。その金額は売却基準価額の20%(またはそれ以上・民事執行規則39条)と決まっています。具体的には競売の『公告書』で必ず確認してください」


落札額の一部を支払って、残りは後払いということもできる?


「いえ、代金全額を納入できない場合は、売却許可決定は効力を失います。また保証金の返還請求もできなくなります(民事執行法80条1項)。つまり、保証金は没収されるわけですね。結構な大金ですから、家族ともめたりしないように注意しましょう。『夢のマイホーム』から『離婚の危機』へ転落・・・・なんてことになったら大変です」


「競売に参加する際に注意してほしい点は、ほかにもあります」。瀬戸弁護士はそのように言って、次のような注意点をあげる。


 (1)建物の内部を事前に確認することができない(雨漏りや、シロアリ被害など)


 (2)隣地との境界が不明確な場合があり、落札者が自己責任で境界を確定する


 (3)区分所有法に基づき、前主の負債を引き継ぐ(滞納管理費など)


 (4)占有者がいる場合、追い出すのは落札者の負担


 (5)共同入札の場合、事前許可が必要


 (6)農地の場合、農業委員会の許可が必要(農地法)


 (7)競売そのものが取り下げられて、肩透かしをくらうことがある


「このように、競売にはかなり特殊な要素があります。十分に注意し、専門家に相談しながら進めるべきだといえますね」


最福寺が入札時に納めた約5億円の保証金は没収されることになる。我々も「割安だから」と、家を普通に買うつもりで気軽に競売に手を出せば、痛い目を見る可能性もありそうだ。


(弁護士ドットコム トピックス編集部)



【取材協力弁護士】
瀬戸 仲男(せと・なかお)弁護士
アルティ法律事務所代表弁護士。大学卒業後、不動産会社営業勤務。弁護士に転身後、不動産・建築その他様々な案件に精力的に取り組む。我が日本国の伝統・文化をこよなく愛する下町生まれの江戸っ子。http://www.arty-law.com/(URL構築中。5月中旬から見れるようになります)
事務所名:アルティ法律事務所