2013年04月29日 18:20 弁護士ドットコム
誰にも看取られることなく息を引き取る「孤独死」が社会問題になって久しい。「明確な定義はない」ことから全国統計は取られていないが、一説には年間3万件あるとも言われ、年々増加していると考えられている。
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孤独死の背景として挙げられるのが、単独世帯の増加と周囲との関わりの薄さだ。家族がいても、離れて暮らしていれば異変に気付くことは難しいだろう。一人暮らしの学生や会社員でも、孤独死する可能性はあると言える。
そんな「孤独死時代」で気になるのが、アパートやマンションなどの賃貸住宅の連帯保証人の立場だ。借主(賃借人)が自殺した場合は賠償金を支払うケースもあるようだが、突然死や病死などの場合はどうだろうか。連帯保証人はどのような責任を負う可能性があるのだろうか。日本マンション学会会員で、賃貸住宅の問題にも詳しい魚谷隆英弁護士に聞いた。
●「人が亡くなられること自体は、人間が居住していく上で避けられない出来事」
「借主が孤独死した場合、連帯保証人は、明渡しまでの賃料を支払う義務があります」
魚谷弁護士はまずこのように指摘する。一般的に連帯保証人は、メインの債務者と同様の義務を負うことになるからだ。マンションやアパートなどの賃貸借の場合、借主が負っていた賃料や敷金、更新料などの支払い義務を連帯して負うことになる。
「ほかにも、もし借主が部屋の壁や床などを壊してしまっていたら、修理する義務もありますし、明渡し後の原状回復義務などの義務もあります」
つまり、借主が「孤独死」した場合でも、連帯保証人は借主が本来負っている義務をそのまま果たすということに変わりないということだ。では、借主が突然死したことを理由に、損害賠償まで求められることはあるのだろうか。
「借主が亡くなったということだけを理由に、連帯保証人は直ちに損害賠償する必要があるわけではありません」と魚谷弁護士は答える。
「自殺などの場合、部屋を賃貸しにくくなるため、損害賠償が認められることもありますが、自然死などの場合、人が亡くなられること自体は、人間が居住・生活していく上で避けられない出来事です。
ですから、特別な事情がない限り、連帯保証人が損害賠償義務まで負うことはないでしょう。さきほど述べたような本来的な義務を超えて、損害賠償までしなければならないケースは稀だと思います」
このように説明したうえで、魚谷弁護士は「実際に、連帯保証人になるときには、賃貸借契約書に責任の範囲についての条文が記載されていると思いますので、必ず賃貸借契約書の内容をチェックしてみてください」とアドバイスしている。
(弁護士ドットコム トピックス編集部)
【取材協力弁護士】
魚谷 隆英(うおや・たかひで)弁護士
第一東京弁護士会所属
2001年弁護士登録。2011年に独立し、うおや総合法律事務所開設。企業関係の裁判、保険法務、倒産事件等を主に扱う。日本マンション学会会員で、暮らしに密接した分野の相談にも積極的に取り組んでいる。
事務所名:うおや総合法律事務所
事務所URL:http://uoya-law.com