2013年04月24日 17:01 弁護士ドットコム
俳優の三國連太郎さんが4月14日、90歳で亡くなった。報道によると、三國さんは生前、長男の佐藤浩市さんに対して「戒名もいらない。散骨して誰にも知らせるな。三國連太郎のままでいく」と告げていたという。また、昨年4月に亡くなった俳優の安岡力也さんの遺骨も、遺族の手によってハワイの海で散骨された。
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「散骨」は芸能人に留まらず、最近では一般の人々にも広がっていると耳にする。墓の管理・継承の問題から、墓に入ること自体を嫌う傾向まで、背景には様々な事情があるようだ。「死んだら一緒のお墓に入ろう」などといったセリフは、もはや時代遅れなのかもしれない。
かつてよりも身近になった散骨だが、「遺骨」の扱いをめぐっては、刑法の死体遺棄・損壊罪や墓地埋葬法など、意外と多くのルールがある。その性質上、どこで行っても良いわけでもなさそうだ。人生を締めくくる最後の儀式を問題なく行うためには、どのような点に気をつければ良いのだろうか。田村勇人弁護士によると、散骨の「方法」と「場所」に関して2つのポイントがあるという。
●遺骨は「パウダー状」にしたり、「布に包む」のが望ましい
「遺骨を遺骨とわからないような状態にして、岸から離れた海で行わなければ、法律違反やトラブルの元になります」と田村弁護士は注意を呼びかける。
田村弁護士によると、まず注意すべき法律は、死体等遺棄罪(刑法190条)と墓地・埋葬等に関する法律(墓埋法)だ。
死体等遺棄罪では、「遺骨」を「遺棄」すると3年以下の懲役刑となる。ただし法務省は非公式ながら、「節度を持って散骨が行われる限り、違法ではない」という見解を示している。
そして「節度を持って」というのは、この場合、「骨を遺骨とわからないような状態にする」という意味だ。つまり散骨の際には、細かいパウダー状にしたり、布で包んで散骨するといった、散骨業者が行っているような方法でする必要があるということだ。
●散骨の場所は「岸から離れた海」のほうがよい
次に墓埋法では「焼骨の埋蔵は、墓地以外区域にはしてはならない」と決まっている。この場合の「埋蔵」とは、土中に埋めることだ。つまり、墓地以外の土中に散骨することは、墓地埋蔵法違反で千円以下の罰金又は拘留若しくは科料となる。
よって、「墓地内の自然葬という方法であれば別ですが、土中に埋める方法での散骨は原則的にできません」と田村弁護士は言う。
それでは、海上ならばどこでも良い?
「いえ、これらの法律をクリアしたとしても、岸の近くで漁業権が存在する海中に散骨すると、漁業権者などから、精神的苦痛を理由とした慰謝料請求や風評被害を理由とした損害賠償請求をされる危険性があります」と、田村弁護士は注意喚起する。
結論的には「遺骨とわからないように」「岸から離れた海で」、散骨することが望ましいということだ。
今後、散骨がますます一般的になってくれば、ルールの制定や周知徹底などが必要になってくるかもしれない。田村弁護士は「死後どのような形で葬られたいか、家族をどのように送り出したいかという希望は、信教の自由とも関係のある重要な権利です。しかし、全ての権利がそうであるように、他人との調整が常に必要なこともまた真実です。できれば国民的議論を経て法整備されることが望ましいでしょう」と話している。
(弁護士ドットコム トピックス編集部)
【取材協力弁護士】
田村 勇人(たむら・はやと)弁護士
弁護士法人フラクタル法律事務所代表
高嶋・美元離婚裁判で、判決を的中させた唯一の弁護士。離婚に限らず広く男女問題の専門家として活躍する一方家事事件全般、医師側の医療訴訟を多数手掛ける。著書に「フラクタル法律事務所の離婚カウンセリング~答えが出るノート~」がある。
事務所名:弁護士法人フラクタル法律事務所
事務所URL:http://www.fractal-law.com/