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中国で「鳥インフル」が猛威 日本の「新型インフル特措法」は生活をどう変える?

2013年04月20日 15:20  弁護士ドットコム

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中国で鳥インフルエンザウイルス「H7N9型」の被害が拡大しており、死者まで発生する事態に至っている。鳥インフルエンザは感染力が非常に強いのが特徴だ。2009年にはメキシコなどから発生した流行が世界に広がり、世界保健機関が「パンデミック(世界的な流行)」を宣言する事態になったことも記憶に新しい。


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日本政府は隣国での流行拡大を受けて4月13日、「新型インフルエンザ対策特別措置法」を本来よりも前倒しで施行した。だが、感染拡大を予防するための対策の中には、人々の行動を厳しく制限するような内容も含まれている。この特措法はどんな法律で、日常生活にどのような影響を与える可能性があるのだろうか。古賀克重弁護士に聞いた。


●住民の外出自粛や強制休校、施設利用制限も


古賀弁護士は中国での流行について、「感染規模や日本を含めた近隣国への影響などは不透明です。人から人への感染についてもよく分かっておらず、現段階で今後どうなるとはっきりしたことは言えません」と現状を説明する。また、特措法に基づいて、日本政府がどんなアクションを起こすかを具体的に決める『政府行動計画』についても、4月16日に有識者会議へ計画案が提出されたばかりという状況だ。


ではそもそも、特措法はどのような枠組みの法律なのだろうか。まず目的は、新型インフルエンザの流行から国民の命や健康を守りつつ、生活や経済に及ぼす影響を最小にすることだ。法律の目玉となるのは「新型インフルエンザが国内で発生し、全国的かつ急速なまん延によって生活や経済に甚大な影響を及ぼすと政府が判断した場合に行う『新型インフルエンザ等緊急事態宣言』(32条)です」と古賀弁護士は言う。


行政側はこの緊急事態宣言をうけて、様々な対策を講じることになる。例えば都道府県知事は、住民に対して自宅からの外出を自粛するよう要請したり(45条1項)、学校を強制的に休校にしたり、百貨店など多数の者が利用する施設の使用を制限できる(45条2項)。さらに、市町村が住民に対して予防接種を実施することも定められている(46条)。この緊急事態宣言の発動期間は、「2年を超えてはならない」(32条2項)が、場合によっては1年延長される(32条4項)としている。


つまりは、年単位に及んで、国民の行動が制約される可能性があるということだ。古賀弁護士は「仮に新型インフルエンザがひろまったとしても、国や地方公共団体は、必要以上に人権制限を行わないように注意を払わなくてはなりません。例えば、外出制限は『新型インフルエンザの潜伏期間、治癒までの期間、発生状況を考慮して定める』とされていますが、確かな知見に基づいて控えめに判断されるべきです」と、関係者に注意を促す。


ちなみに、新型インフルエンザ及び鳥インフルエンザに関する関係省庁対策会議が2009年2月の段階でまとめた「新型インフルエンザ対策行動計画」の最悪のシナリオでは、約200万人が入院、約64万人が死亡するという想定がされていた。だが、古賀弁護士は「これは1918年に発生したスペインインフルエンザのデータを元に推計した数値で、100年前と現在の衛生状態や医療水準の違いからすると余りに過大と言えます」と指摘。「メディアも含めて関係者が過剰に反応せずに、冷静な対応を心がけることが必要です」と話している。


(弁護士ドットコム トピックス編集部)



【取材協力弁護士】
古賀 克重(こが・かつしげ)弁護士
福岡県弁護士会所属。平成25年度福岡県弁護士会副会長。
自己破産・債務整理などの消費者事件、医療事故や医療過誤訴訟、離婚や遺産問題、少年事件、薬害肝炎訴訟などの集団訴訟など、幅広く活動している。
事務所名:古賀克重法律事務所
事務所URL:http://www.lawyer-koga.jp/