2013年04月19日 18:40 弁護士ドットコム
俳優の岩城滉一さんが、2014年に宇宙飛行に挑戦することを発表し、注目を集めている。オランダのSXC社の民間宇宙旅行プロジェクトに参加し、出発から帰還まで45分間のフライトにのぞむ。宇宙空間には3、4分程度の滞在となるというが、芸能人としては初めての宇宙旅行だ。
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東京都内で4月18日に開かれた記者会見で、岩城さんは「リスクとかあるでしょうけど、成功したら安全なんだって行きたがる人が世界中にいらっしゃるのでは」と口にしたという。今回の報道を見て、「自分も宇宙旅行に行ってみたい」という人も多いのではないだろうか。
「でも、宇宙旅行には、きちんと認識しておいたほうがいい法律上の問題があるのです」と指摘するのは、日本航空宇宙学会に所属し、宇宙法にも理解がある作花知志弁護士だ。宇宙旅行で注意すべき「法律上の問題」とはなんだろうか。
●体調不良で宇宙旅行に行けなくなっても、料金は戻ってこない
「まず、宇宙旅行の料金を払い込んだ後、旅行直前になって体調不良となったり、体に宇宙旅行には堪えられない問題が見つかったりした場合でも、宇宙旅行の料金は戻ってこないのが通常です」
たとえば、海外旅行のための飛行機の予約をキャンセルした場合は、「他の乗客にその空いた枠で行ってもらおう」と考えられるため、返金がされやすい。しかし、作花弁護士によれば、「宇宙旅行の料金は、宇宙旅行船の席や椅子の『買い取り契約』として扱われます」。そのため、「キャンセルがあれば代わりの人に」という考え方がそもそもないのだという。「そのような主張が法律上有効かどうかは別にして、そのような説明がされています」
したがって、宇宙旅行に行こうという人は、そのような「キャンセルしても旅行代金が戻ってこない」リスクがあることを念頭に置く必要があるといえる。
●トラブルが生じた場合に「どの国で裁判が行われるのか」も重要
次に、岩城さんの宇宙旅行を企画しているのはオランダの会社だが、その点に関する問題もあるという。
「岩城さんの場合もそうですが、現在宇宙旅行を主催している会社はみな外国の会社です。宇宙旅行に行くとなれば、その外国の会社と『宇宙旅行契約』を結ぶことになりますが、その契約に適用される法律はどの国のものなのか、トラブルが生じた場合にどの国で裁判を行うのか、といった点について、契約締結の前に確認しておくことが求められます」
夢とロマンを運んでくれる宇宙旅行がいよいよ、一般の人々にも開かれようとしていて、胸が踊る感じがするが、同時に新しい法律問題が生じる可能性もあるのだ。宇宙旅行契約を専門に扱う「宇宙弁護士」が登場する日も、そう遠くはないのかもしれない。実は作花知志弁護士も、いつか「宇宙弁護士」となる日のことを夢見ているのだそうだ。
(弁護士ドットコム トピックス編集部)
【取材協力弁護士】
作花 知志(さっか・ともし)弁護士
岡山弁護士会,日弁連裁判員本部,日弁連国際人権問題委員会, 日本航空宇宙学会,国際人権法学会などに所属
事務所名:作花法律事務所
事務所URL:http://sakka-law-office.jp/