2013年04月15日 20:30 弁護士ドットコム
道ばたや空き地に捨てられた中古家具や電気製品の中には、まだまだ長く使えるものがあるかもしれない。そんな「粗大ごみ」を地元住民がマッピングして、ほかの人が回収できるようにするサイトを、カナダの会社が開設した。
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このサイト「Trashswag」は、人々がゴミを有効に活用するための情報共有システムだ。サイトには、カナダ最大の都市・トロントの地図が設置され、道ばたやゴミ置き場に捨てられた家具や木材の情報が写真つきで表示されている。このような粗大ゴミのほとんどは、持ち主が所有権を放棄していると言えるだろう。拾って利用しても問題にならない気もするし、エコという点で望ましいと思われる。
日本でも、資源ごみの日に回収場所に置いてあったマンガを持ち帰ったなんて話も耳にする。では、日本で、道ばたや空き地に捨てられている家電製品や中古家具を勝手に持ち帰った場合、法的に問題はないのだろうか。また、持ち帰ったあとに、元の持ち主から「返せ」と言われたらどうなるのだろうか。梶山正三弁護士に聞いた。
●所有者が「所有権を放棄」した物は、「無主物」となる
「海に棲む魚など、本来所有者が存在しない物や、もともと所有者がいたが、その所有者が所有権を放棄した物は、『無主物』と呼ばれます。このような無主物は、誰かが所有の意思を持ってそれを自己の占有(支配)の下におけば、所有権を取得することができます(民法239条1項)」
では、道ばたに長期間放置されていた家具や家電製品、または、町内のゴミ捨て場に長期間放置されていた自転車などは『無主物』として、第三者が持ち去っても問題ないのだろうか。
「放置自転車については、過去に占有離脱物横領(刑法254条)として送検された事例があります。つまり、無主物と認められない場合があるということです。
また、一見、所有権が放棄されたように見えるが、所有者の意思としては『放棄していなかった』という場合、所有者からの返還請求に応じなければなりません。
ただ、仮に所有者がそういう意思だったとしても、客観的な状況から所有権放棄と信じることに合理的な理由があれば、占有離脱物横領の故意がないとして犯罪にはなりません」
●市町村のゴミ収集場に置かれた粗大ゴミはどうか?
このように、道ばたに放置されているからといって、必ずしも「無主物」とは言い切れないようだ。では、自治体のゴミ収集場に置かれた粗大ゴミはどうだろう。
「市町村が、空き缶・空き瓶・古紙などをリサイクル目的で分別収集場所を特定して集めている場合は、市町村が占有している状況が明らかです。したがって、そこから無断で持ち出した物については、民事的には市町村に対する返還義務があります。また、刑事的には窃盗罪(刑法235条)になります」
(弁護士ドットコム トピックス編集部)
【取材協力弁護士】
梶山 正三(かじやま・しょうぞう)弁護士
東京都公害研究所職員から転身。関弁連公害環境委員会の委員長を6年。宇都宮大、滋賀大、東大、埼玉大等の非常勤講師。2000年~現在、ゴミ弁連(闘う住民と共にゴミ問題の解決を目指す弁護士連絡会)会長。
http://gomibenren.jp/
事務所名:駒ヶ岳法律事務所