2013年04月09日 12:00 弁護士ドットコム
天からの試練か、はたまた贈り物か――。今年2月、ロシア・ウラル地方チェリャビンスク州に落ちた隕石は、落下時の大きな衝撃波によって窓ガラスなどが割れて、1500人以上が負傷する事態となった。その時の様子を収めた多くの映像が、YouTubeなどを通して拡散し、世界中の注目を集めることになった。
一方、報道によると、落下から数日後、さっそくインターネットのサイトで、「隕石」と称する石が販売されていたらしい。その値段はおよそ「150万円」だったという。では、もし日本に隕石が落ちたとして、それを拾って勝手に売ってよいものなのだろうか。日本航空宇宙学会に所属し、宇宙法にも理解がある作花知志弁護士に聞いた。
●隕石が自分の土地に落ちてきた場合は「自分の物」とすることができる
「月などの天体を含む宇宙空間は、国連で採択された国際条約である宇宙条約や月協定により、国家による領有が禁止されています。ただ、これはあくまでも宇宙空間についてのものであり、宇宙から落下してきた隕石については、その落下した国の国内法によって規律されることになります」
このように述べたうえで、作花弁護士は「隕石の所有者の決まり方」について、次のように説明する。
「たとえば、隕石が、日本国内にある自分の土地に落ちてきた場合は、民法239条1項により、『所有の意思をもって占有(所持)』することで、自分の所有物とすることができます」
では、隕石が他人の所有する土地に落ちた場合はどうなのか。
「まず、隕石が他人の土地に埋まってしまった場合には、民法242条によって、その土地の持ち主の所有物となります。一方、土地に埋まっていない場合は、『誰の所有物でもない隕石』が他人の土地の上にあることになります。
その場合は、自分の物にする意思でそれを見つけて手にすれば、自分の所有物とすることができます。もっとも、勝手に他人の土地に入れば、住居侵入等の問題が生じる可能性がありますが」
このような形で、隕石を自分の「所有物」とすることができれば、「売るかどうかはその人の自由ということになります」ということだ。だからといって、「隕石がほしいから自分の土地に落ちてくれ」と願う人はたぶんいないだろう。
(弁護士ドットコム トピックス編集部)
【取材協力弁護士】
作花 知志(さっか・ともし)弁護士
岡山弁護士会,日弁連裁判員本部,日弁連国際人権問題委員会, 日本航空宇宙学会,国際人権法学会などに所属
事務所名:作花法律事務所
事務所URL:http://sakka-law-office.jp/