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「キャンセルを受け付けない」 ネット通販業者との契約は無効にできる?

2013年04月06日 23:50  弁護士ドットコム

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インターネットのサイトを通して、商品を購入することができる「ネット通販」。わざわざ実店舗に行かなくても、その商品が欲しいと思った時に注文できて使いやすい。一方で、商品を注文する際にミスをすることも多い。たとえば、「10個」のところ「100個」とケタを間違えて入力してしまうなんてことだ。


弁護士ドットコムの「みんなの法律相談コーナー」でも、ネット通販で商品を間違えて注文したという人から相談が寄せられている。この相談者によると、注文直後にキャンセルする旨のメールを送ったが、ショップから「注文ありがとうございました。ただ今から発送の準備に入ります。今後お客様の都合によるキャンセルは一切お受けできません」という返信がきたという。


相談者は「キャンセルは不可能なのでしょうか?」と悩んでいる。このように、「キャンセルは一切お受けできません」というネット通販業者との契約を無効にすることはできるのだろうか。また、注文するつもりのない商品を見間違えてクリックしたり、商品の個数を間違えて購入した場合はどうだろうか。西田広一弁護士に聞いた。


●「キャンセルは一切お受けできません」という通知がきた場合


西田弁護士は「消費者が販売業者と行うインターネット取引では、特定商取引法上の通信販売に該当し、クーリングオフ制度の適用はありません」と説明する。


クーリングオフ制度ならば、一定期間内であれば無条件で契約を解除することができる。だが、それが適用されないとなると、相談者は商品を「キャンセルできない」ということになるのだろうか。


「しかし、特定商取引法によると、販売業者が広告において返品の可否・条件(返品特約)を表示する義務があります(同法11条1号・4号)。


したがって、返品特約があれば、その特約に従って返品できます。返品できないと定めていても、これを広告に表示していない場合、商品の引渡し、または移転を受けた日から起算して8日を経過するまでは返品できます(同法15条の2第1項)。


この相談者の場合、業者が広告で返品できないことを表示していなければ、業者がいくら『キャンセルできません』と通知しても返品(契約の解除)ができることになります。


業者が広告で返品特約を表示していた場合、その特約内容によることになりますが、『注文直後発送の準備に入ると返品できない』という特約内容は実質返品機会を与えない不合理な定めとして、信義則上無効となり(民法1条2項)、返品が可能といえます」


●商品を間違えてクリックしたり、商品の個数を間違えて購入した場合


ショップから「キャンセルは一切お受けできません」というメールがきた相談者のケースでは、キャンセルできる可能性はあるようだ。では、ネットショップで買い物する際に、注文するつもりのない商品を見間違えてクリックしたり、商品の個数を間違えて購入した場合はどうだろうか。


「注文するつもりのない商品を見間違えてクリックしたり、商品の個数を間違えて購入した場合、『要素の錯誤』があると思われ、錯誤無効(民法95条)の主張ができます。ただし、消費者に重過失があって錯誤無効の主張が制限されるのではないかが問題となります。


この点、ネット取引の特徴から消費者が誤入力・誤送信しやすい特性に鑑み、事業者による確認措置の提供がなかった場合には、重過失がありとの主張ができないとされています(電子契約法3条)」


西田弁護士によると、「(1)商品を選択する操作であると明確に認識でき、(2)最終申込前に再度意思確認画面が表示され、(3)訂正の機会が与えられて、初めて「確認措置の提供」があったとされる」という。


「したがって、このような確認措置の提供がなかった場合、消費者は、錯誤無効の主張をして返品することができます。なお、確認措置の有無に関係なく、(1)に記載した返品(契約解除)を行うこともできます」


インターネットで買い物する際に「クーリングオフ制度」が使えないというのは驚きだが、以上のことを踏まえながら、あわてず冷静に対処するとよいだろう。


(弁護士ドットコム トピックス編集部)



【取材協力弁護士】
西田 広一(にしだ・ひろいち)弁護士
1956年、石川県小松市生まれ。95年に弁護士登録(大阪弁護士会)。大阪を拠点に活動。得意案件は消費者問題や多重債務者問題など。大阪弁護士会消費者保護委員会委員。関西学院大学非常勤講師。最近の興味関心は、読書(主にビジネス書)、クラウドサービスなど。
事務所名:弁護士法人西田広一法律事務所
事務所URL:http://law-nishida.jp