2013年03月29日 16:21 弁護士ドットコム
吸引すると幻覚作用などを引き起こし、違法薬物と似た効果をもたらす「脱法ハーブ」。いまのところ所持・吸引を取り締まる法律はなく、簡単に手に入るため、若者のあいだで急速に広まっているという。昨年には、吸引した中学生が一時意識不明になるという問題もおきた。
厚生労働省はこれまで、脱法ハーブに使われる92種類の薬物を「指定薬物」として製造・販売を禁止してきた。だが、業者とのあいだでイタチごっこ状態となっているという。このような状況を受け、3月22日からは、新たに759種類の薬物の製造・販売が禁止となった。
新たに禁止対象となったばかりのハーブを、そうとは知らずに販売している店もあるだろう。そのような場合、ハーブを販売した人はどのような罪に問われるのだろうか。魚谷隆英弁護士に話を聞いた。
●「違法」と知らなくても、罪に問われることがある
「店の売っているハーブが、指定薬物に指定されていて、実は製造・販売が禁止されていたが、その店はそのことを知らなかったという場合でも、薬事法違反の罪に問われることがあります」
魚谷弁護士はこのように指摘する。なぜ違法と知らなくても罪になるのだろうか。
「刑法38条3項には、『法律を知らなかったとしても、そのことによって、罪を犯す意思がなかったとすることはできない』という規定があります。
したがって、今回の新しい規制を知らず、自分が販売するハーブが製造・販売の禁止された指定薬物だということを知らなかったからといって、罪を犯す意思(故意)がなかったということはできません」
この刑法38条3項の但書には「情状により、その刑を減軽することができる」と書かれているので、「場合によっては、刑を減軽してもらえるかもしれないというだけになります」ということだ。
「したがって、たとえば弁護士に予め相談し、法律上は問題ないと言われたので、『このハーブなら大丈夫』と思ってハーブを販売していた場合でも、実は、それが『指定薬物』だったというときには、罪を問われる可能性があります。
いわゆる脱法ハーブに対する規制は、今後も広がっていく可能性がありますから、十分に気をつけたいところです」
魚谷弁護士が指摘するように、脱法ハーブが「違法ハーブ」に変わる可能性は今後もあるのだから、その点に注意しないといけないということだろう。
(弁護士ドットコム トピックス編集部)
【取材協力弁護士】
魚谷 隆英(うおや・たかひで)弁護士
第一東京弁護士会所属
2001年弁護士登録。2011年に独立し、うおや総合法律事務所開設。企業関係の裁判、保険法務、倒産事件等を主に扱う。日本マンション学会会員で、暮らしに密接した分野の相談にも積極的に取り組んでいる。
事務所名:うおや総合法律事務所
事務所URL:http://uoya-law.com