2013年03月28日 13:30 弁護士ドットコム
警察庁と法務省はこのたび、ストーカー事件で執行猶予の判決を受けた加害者の情報を共有し、その加害者が再び被害者に近づこうとした場合には、すみやかに執行猶予を取り消して加害者を収監できるように取り組むことを決めた。
この取り組みは、昨年11月に逗子市で起きたストーカー殺人事件がきっかけとなっている。このように犯罪となってしまうようなストーカー行為は許すべきではないが、昔の恋人の消息を確かめようとするのはどうだろうか。アメリカでは「昔の恋人探し」の代行会社があるそうだが、日本でも、かつて交際していた相手の近況を知りたいと思う人は多いのではないか。
では、一般の人が探偵などを使って、昔の恋人を探そうとするのは「ストーカー行為」にあたるのだろうか。古金千明弁護士に聞いた。
●「つきまとい行為」はストーカー規制法で規制されている
まず古金弁護士は、ストーカー行為を規制する法律について、次のように説明する。
「ストーカー規制法は、相手方に対する恋愛感情や恋愛感情が満たされなかったことに対する怨恨感情を満たす目的のために、つきまとい、待ち伏せ等の一定の行為をすることを規制しています。
このような『つきまとい行為』を行うと、警察からの警告の対象となり、警告に従わないと公安委員会によって禁止命令が発令されることがあります。また、つきまとい行為を反復して行うと、ストーカー行為として、刑事罰の対象にもなります」
では、昔の恋人探しは「ストーカー行為」にあたるのか。
「一般の人が探偵を使って、昔の恋人を探す『だけ』でしたら、ストーカー規制法が規制している『つきまとい行為』や『ストーカー行為』に該当する可能性は高くはないと思われます。
しかし住所については、プライバシーの保護の対象になります。昔の恋人が連絡先を教えていないということは、連絡をしないでほしいという意思である場合が多いでしょう。
そうすると、友達に連絡先を聞いてみるという一般的な手段であればいざしらず、相手の意思に反して、探偵を使ってまでして住所を探し出す行為は、プライバシー侵害として民事上の不法行為に該当する可能性があります」
つまり、探偵を使って昔の恋人を探すことは、ストーカー行為とまではいえないが、プライバシー侵害にあたる可能性があるということだ。
●昔の恋人の自宅を訪問すると?
では、ただ調べるだけでなく、実際に行動に移すとどうなるのだろう。
「相手の意思に反して、探し出した昔の恋人の自宅を訪問するとか、連絡をとろうとした場合は、つきまとい行為・ストーカー行為に該当する可能性が高くなります。
もちろん、恋愛感情を満たす目的ではなく、別の正当な目的があれば、つきまとい行為・ストーカー行為には該当しません。
ただし、教えてもらっていない昔の恋人の今の住所を、探偵を使ってまでして探し出すのは、恋愛感情を満たす目的ではないかと判断されやすいかと思いますので、誤解を招くような行動をされない方がよいと思います」
昔の恋人探しも、場合によっては「ストーカー行為」とみなされる可能性があるということなので、相手の意思も考えながら、慎重に進めたほうがいいということだろう。
(弁護士ドットコム トピックス編集部)
【取材協力弁護士】
古金 千明(ふるがね・ちあき)弁護士
天水綜合法律事務所・代表弁護士。個人から法人(IPOを目指すベンチャー企業・中小企業、上場企業)に対するリーガルサービスを提供しております。取扱分野は、企業法務、労働問題、M&A、倒産・事業再生、一般民事(離婚・男女関係含む)です。
事務所名:天水綜合法律事務所