2013年03月26日 22:20 弁護士ドットコム
少年院の教官のあごを「はし」で突き刺す――。今年2月、少年院に収容されている少年が、社会復帰のための教育を担当する法務教官に重傷を負わせるという事件がおきた。
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報道によると、千葉県八街市(やちまたし)の少年院で、食事中に注意され逆上した少年が、教官のあごを木製のはしで突き刺したのだという。教官は全治1か月の重傷を負い、少年は3月18日に公務執行妨害と傷害の疑いで千葉県警に逮捕された。
少年院の外であれば、他人に危害を加えた者が逮捕されるのは当たり前だと言える。だが、既に少年院内にいる場合は、逃亡のおそれはなく、逮捕するというのは不思議な感じもする。では、このような場合、あらためて逮捕する必要はあるのだろうか。また、少年院内と外では、犯罪の処罰に違いがあるのだろうか。少年事件に詳しい大和幸四郎弁護士に聞いた。
●少年院の中でも逮捕する必要性がある
「たしかに少年院においては逃亡のおそれはないと思います。しかしながら、罪証隠滅のおそれはあると思います。
たとえば、現場に居合わせた友人などに働きかけ、自己が有利になるような供述等をさせるおそれが考えられます。したがって、逮捕の必要性はあると思います」
つまり、少年院の中でも逮捕の必要性がある場合があるということだ。
「私は成人受刑者が勾留されたときに準抗告を申し立てた経験がありますが、罪証隠滅のおそれあり、として却下された経験があります」
●少年院の中での犯罪は、処罰が重くなるか?
では、少年院内と外では、処罰に違いはあるのだろうか。
「難しい問題で、弁護士間で見解が分かれるかも知れませんが、私は、基本的に違いはないと思います。
ただ、少年院に収容されているときの犯罪ですので、事実上、要保護性が高いとして、少年に対する処分が厳しくなるおそれはあると思います」
では、もし処罰が重くなった場合、「更生施設」である少年院から刑務所に移されたり、特別な措置がされたりはあるのだろうか。
「逆送して、裁判で懲役刑の実刑にならない限り、刑事施設である刑務所に行くことはありません。もっとも、少年審判において、犯罪傾向の進んだ少年を収容する特別少年院に送致される可能性はあります」
少年院という「閉ざされた場所」の実態はなかなか外からうかがい知ることが難しいが、社会にとって重要な意味をもつ公共の施設である以上、その内実を多くの人に知ってもらう必要があるといえるだろう。
(弁護士ドットコム トピックス編集部)
【取材協力弁護士】
大和 幸四郎(やまと・こうしろう)弁護士
武雄法律事務所。佐賀大学経済学部非常勤講師。のあとは過払い・借金問題、離婚・不倫問題、刑事・少年事件など実績多数。元「西鉄高速バスジャック事件」付添人。
事務所名:武雄法律事務所
事務所URL:http://www.takeohouritu.jp/