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死亡事故にもつながる新歓「イッキ飲み」 周りで見過ごしたら犯罪か?

2013年03月26日 14:10  弁護士ドットコム

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春の入学シーズン。大学でサークルや部活の先輩が新入生に酒を飲ませることは、一種の「洗礼」とも言われる。しかし近年、多量の飲酒による死亡事故がしばしば発生していることを受けて、大学や飲酒メーカーでは対策を強めている。


昨年6月、サークルの懇親会に参加した学生が急性アルコール中毒で死亡した慶応大学。同大では今年2月にも学生団体が主催した飲み会で学生が死亡している。あいつぐ悲劇を受けて、同大は3月11日、公式サイトで「学生の飲酒事故の根絶に向けて」と題した再発防止策を発表した。また洋酒メーカー「ペルノ・リカール」の日本法人は「NO IKKI賞」を創設し、優れた飲酒対策を行う大学を表彰している。


このように各界で飲酒事故防止に向けた取り組みが進んでいるが、実際に、酒に慣れていない学生に飲酒を強要して事故を起こした場合、どのような処罰が下るのだろうか。「イッキ飲み」で酒をすすめるのは犯罪なのか。それを周りで見ていた場合はどうか。内川寛弁護士に聞いた。


●イッキ飲みを強要して急性アルコール中毒になれば「傷害罪」の可能性あり


「暴行や脅迫によるイッキ飲みの強要は、強要罪になります。暴行や脅迫はなくとも、新入生を酔わせてつぶすため、『伝統だから』などとしてイッキ飲みを強要し、急性アルコール中毒や意識障害を起こさせると、傷害罪になります。


仮に意図的でなかったとしても、イッキ飲みが危険な行為であることは既に常識だと思われますので、少なくとも過失傷害罪が成立します。そして、その新入生が死亡した場合は、傷害致死罪か、過失致死罪になります」


このようにイッキ飲みの強要は、強要罪や傷害罪などの犯罪になりうるという。では、周りで見ている者の責任はどうなのだろうか。


「周囲ではやし立てるなどして、新入生がイッキ飲みをせざるを得ない状況に陥らせた先輩たちも、共犯として処罰されることがあり得ます。状況次第で、強要した先輩と同等の共同正犯か、正犯者を精神的に後押しした幇助犯(従犯)あるいは傷害現場助勢罪となります」


つまり、イッキ飲みを周囲ではやし立てる行為も犯罪となる可能性があるということだ。


●周囲で見過ごしていた学生が「共犯」とされる場合もある


さらに、内川弁護士によると、「イッキ飲みの強要を止めることなく、周囲で見過ごしただけの学生も、共犯になることがあり得ます」という。


「たとえば、新歓コンパで新入生をイッキ飲みでつぶす『暗黙の了解』があった場合、ダウン寸前の新入生に、さらに大量のアルコールのイッキ飲みを強要するのを、すぐそばで判っていながら止めなかったケースなどでは、共犯と言われてもやむを得ないでしょう。


なお、酔いつぶれた新入生が放置され、吐瀉物を気管に詰まらせて死亡したケースでは、状況しだいで保護責任者遺棄致死罪が成立します」


このように説明したうえで、内川弁護士は「いずれにせよ、飲んだ新入生の自己責任にしてしまうことはできません」とまとめている。


その場のノリでやってしまいがちな「イッキ飲み」だが、一歩間違えると、さまざまな犯罪につながる可能性があるということだ。新入生の歓迎会ではそのような点に注意して、節度ある対応を心がけたいものだ。


(弁護士ドットコム トピックス編集部)



【取材協力弁護士】
内川 寛(うちかわ・ひろし)弁護士
あおば法律事務所・共同代表弁護士。熊本県弁護士会・司法制度調査委員会委員長。子どもの人権委員会副委員長。
事務所名:あおば法律事務所
事務所URL:http://www.aoba-kumamoto.jp/