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新入社員はビクビク?「試用期間中の解雇」は問題ないのか

2013年03月21日 14:50  弁護士ドットコム

弁護士ドットコム

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「先日、解雇通知を勧告されました。入社して2ヶ月のことです」。弁護士ドットコムの法律相談コーナーに今年1月、こんな悩みが寄せられた。3ヶ月間の「試用期間中」だったという。相談者の女性によると、「解雇の一番の理由は、お局の方が私を気に入らなかったようで、社長に解雇するよう伝えたものかと思います」というのだ。


これから4月になれば、多くの若者が高校や大学を卒業して、新しく会社で働き始めることになるが、入社後しばらくは「試用期間」とされることも多い。この期間に、企業は社員教育をおこなうわけだが、新入社員の適性を見て、「能力不足」や「協調性がない」などといった理由で、本採用しないで解雇してしまう企業もあるという。


このように入社してまもない社員を、試用期間中に解雇することは法的に問題ないのか。労働問題に詳しい大久保誠弁護士に聞いた。


●試用期間の社員も「労働契約」をむすんでいる


「試用期間中の社員とはいっても、採用するという契約を交わした時点で、企業との間で労働契約(雇用契約)が成立します」


このように大久保弁護士は、試用期間であっても、労働契約が適用されると説明する。そのうえで、「試用期間中の解雇」について、次のように述べる。


「本人の能力や技術、勤務態度、健康状態、素行等に何らかの問題があると認められた結果、試用契約を中途で解約したり、本採用を拒否したりすることは、いったん結んだ労働契約を解約することを意味します。


そして、中途解約や本採用拒否をするためには、試用期間を設けた趣旨・目的に照らして、客観的に合理的な理由が存在し、社会通念上相当であると認められなければなりません」


つまり、労働契約を会社が解除するためには、それ相応の理由が求められるということだ。


●合理的な理由のない「試用期間中の解雇」は無効


「本採用に移行したあとに要求されるほどの厳重な解雇理由は必要ありませんが、本人の能力不足や低劣な仕事ぶり、意欲の低さ、同僚との協調性の欠如、規則上禁じられた活動を行ったこと(事業場内での政治、宗教活動など)、誠実でない人柄などが、客観的な証拠に裏付けられていることが必要です。これを欠く場合には、解雇は無効となります」


このように「試用期間中の解雇」は法律的にできないわけではないが、そのためにクリアしなければいけないハードルがあるということだ。もし解雇理由が納得できない場合は、労働相談センターや弁護士に相談してみるのもいいかもしれない。


(弁護士ドットコム トピックス編集部)



【取材協力弁護士】
大久保 誠(おおくぼ・まこと)弁護士
大久保法律事務所。札幌で20年以上のキャリアがあります。お気軽にご相談下さい。
事務所名:大久保法律事務所
事務所URL:http://www.ookubolaw.com/