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通勤電車の「女性専用車両」 女性客が男性客を追い出すのはOKか?

2013年03月19日 18:40  弁護士ドットコム

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通勤電車での痴漢防止を主な目的として導入された「女性専用車両」。鉄道会社は乗客に対して協力を呼びかけているが、男性客のなかには「男女平等であるべき」との考えから、あえて乗車する人もいるようだ。


そんな女性専用車両に乗り込んだ男性は、周りの女性から白い目で見られるだけでなく、場合によっては口論に発展したり、女性の乗客によって車外に押し出されたりするケースもあるという。


JR 東日本の説明によると、女性専用車両に男性が乗車することは「ご遠慮をお願いしている立場」で、「法律や約款で禁じているものではありません」とのことだが、女性専用車両に乗っている男性を、他の女性客が車両から追い出すことは許されるのだろうか。西田広一弁護士に話を聞いた。


●女性専用車両に乗っている男性を追い出すことは許されるか?


「鉄道会社は一般に、JR東日本と同様の対応であり、『婦人のために設けた車室」への男性の立ち入りを禁じている鉄道営業法34条2号も、現在の女性専用車両には適用されないと考えられます。したがって、男性が女性専用車両に乗車しても違法ではありません。


とすると、男性は適法に女性専用車両に乗車していることになりますので、女性が強制的に男性を追い出すことはできません。しかし、あえて女性専用車両に乗車している女性は、そこに男性が堂々と乗車していることに著しい違和感・嫌悪感を感じるでしょう。


そのため、男性が女性専用車両に乗車していることが適法だとしても、女性が男性に対して任意の協力を求める形で出て行くように要求することは、女性の心情としてやむを得ないものであり、かつ、鉄道会社の意向にも沿うものであることから、適法と思われます」


●女性専用車両に乗った男性を押し出した場合、「強要罪」になるのか?


このように、女性が男性に協力を求める形で退去を要求することは違法ではないということだが、そのレベルを超えて、男性を押し出すような場合はどうなのだろうか。


「男性が適法に乗車している以上、退去要求に応じないとしても、女性が一層強く退去を求めたり、男性を押し出したりすることは、許されないことになります。しかし、もし女性が男性を押し出した場合、強要罪などの犯罪にあたるかといえば、疑問があります」


このように説明したうえで、西田弁護士は次のように述べた。


「女性専用車両にあえて乗車している男性を押し出したとしても、『強要罪の予定するような脅迫・暴行といえない』、あるいは、『目的の正当性から、手段が過剰でない限り違法性がない』として、強要罪や同罪の未遂とは判断されないことが多いだろうと考えます」


女性専用車両については、その是非をめぐって議論があるが、乗客の協力によって運用されているという面がある。その点を男性と女性の双方が理解して、お互いに協力しあって、通勤をできるだけ快適なものにしていけたらいいのではないだろうか。


(弁護士ドットコム トピックス編集部)



【取材協力弁護士】
西田 広一(にしだ・ひろいち)弁護士
1956年、石川県小松市生まれ。95年に弁護士登録(大阪弁護士会)。大阪を拠点に活動。得意案件は消費者問題や多重債務者問題など。大阪弁護士会消費者保護委員会委員。関西学院大学非常勤講師。最近の興味関心は、読書(主にビジネス書)、クラウドサービスなど。
事務所名:弁護士法人西田広一法律事務所
事務所URL:http://law-nishida.jp