2013年03月19日 15:00 弁護士ドットコム
夜の歓楽街の片隅で、艶やかな衣装を身にまとった若い女性が男性たちを接客するキャバクラ。いっけん華やかにみえる世界だが、そこで働く女性たちに過酷な「ルール」が課されている場合もある。
【関連記事:月150時間「サービス残業」 未払い残業代を取り戻すにはどうすべきか?】
弁護士ドットコムの「みんなの法律相談」には、あるキャバクラ嬢から、常識では考えにくいルールについての相談が寄せられていた。その店には「お客様と連絡先を交換してはいけない」という規約があり、もし違反した場合には約100万円の「罰金」が課されるのだという。その場合には、書類にサインと捺印することが求められ、店から「罰金の効力は退職後も数年続く」と告げられるのだそうだ。
このようなキャバクラの「罰金ルール」は有効なのだろうか。違反した場合に100万円もの罰金を課すというのは、そのほかの組織では考えにくいが、水商売の世界では仕方ないのだろうか。秋山亘弁護士に話を聞いた。
●キャバクラ嬢にも「労働基準法」が適用される
「キャバクラ嬢と店側との契約も、雇用契約に該当しますので、労働基準法が適用されます。労働基準法は、社会経済的に弱い立場の労働者を保護する法律で、労働基準法に違反する取り決めは無効とされます」
つまり、キャバクラ嬢も、サラリーマンと同じように労働基準法によって守られているというわけだ。秋山弁護士によれば、この労働基準法のなかには「違約金」に関する条文もあるという。
「労働基準法16条は、『使用者は、労働契約の不履行について違約金を定め、又は損害賠償を予定する契約をしてはならない』と定めています。
本件のように、『お客様と連絡交換をしたら罰金100万円を課す』という取り決めは、『労働契約の不履行について違約金を定めた』場合に当たるため、当然無効になります」
つまり、「100万円」という金額以前の問題として、キャバクラ店が決めている「罰金ルール」は労働基準法に反するから無効というわけだ。
「したがって、キャバクラ嬢としては、このような罰金を支払う必要はありません。仮に支払ってしまったという場合も無効な取り決めによる支払いですので、『不当利得』として雇用主側に返還請求することができます」
キャバクラのような水商売の世界でも、雇用関係で働いている以上は、労働基準法が適用されるのだ。さまざまな事情でキャバクラで働いている女性もいるが、もし法外な「罰金ルール」にサインすることを求められたら、そのような店では働かないようにするのが賢明ということだろう。
(弁護士ドットコム トピックス編集部)
【取材協力弁護士】
秋山 亘(あきやま・とおる)弁護士
民事事件全般(企業法務、不動産事件、労働問題、各種損害賠償請求事件等)及び刑事事件を中心に業務を行っている。日弁連人権擁護委員会第5部会(精神的自由)委員、日弁連報道と人権に関する調査・研究特別部会員。
事務所名:三羽総合法律事務所