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妻が別の「女性」と不倫した!「同性愛者」との浮気でも慰謝料を請求できるか?

2013年03月02日 23:20  弁護士ドットコム

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米国のオバマ大統領は2期目の就任演説で「同性愛者の法の下の平等」について訴えた。この発言は日本でも話題になったが、わが国の民法には同性の結婚についての規定がなく、法整備に向けた具体的な動きもあまり活発とは言えないのが現状だ。


むしろ同性愛者であることを隠して生きている人が少なくないし、場合によっては、同性愛者であるにもかかわらず異性と結婚するひともいるようだ。弁護士ドットコムの「みんなの法律相談」にも、結婚相手が同性愛者で、同性の相手と浮気されてしまった、という悩みが複数寄せられている。


不倫が発覚し、離婚を求める訴訟となった場合、離婚原因を定めた民法770条の「不貞な行為」があったかどうかが争点になることが多い。しかし、770条には「不貞な行為」についての具体的な定義はなく、もちろん同性愛についての記載もない。その内容は法律家の解釈に委ねられているのだ。


では、配偶者が「同性の相手」と不倫した場合、つまり夫が別の男性と、妻が別の女性と不倫関係にあることが発覚した場合、「不貞な行為」にあたるとして離婚できるのだろうか。また、慰謝料請求はどうなるのだろうか。離婚問題に詳しい秋山直人弁護士に聞いた。


●同性が相手の「不倫」でも不貞行為とみなされる可能性はある


秋山弁護士は、「不貞行為」について述べた最高裁の判例をもとに次のように説明する。


「判例(最高裁平成8年3月26日判決)は、第三者が夫婦の一方と肉体関係を持つことが夫婦の他方に対する不法行為となるのは、それが婚姻共同生活の平和の維持という権利又は法的保護に値する利益を侵害する行為であるからだ、と述べています。


このような判例の考え方からすると、異性間の肉体関係でなくとも、それに準ずるような関係を第三者と持つ行為で、『婚姻共同生活の平和の維持』という権利又は利益を侵害する行為については、不法行為になる可能性や、不貞行為と判断される可能性があるように思います。


妻が女性と不倫した場合でも、夫にとっては、『婚姻共同生活の平和の維持』という権利又は利益を侵害され、夫婦関係を破綻させる行為である、といえる余地は十分にあるのではないでしょうか」


●立証さえできれば、離婚請求・慰謝料請求も可能


同性相手との不倫でも不貞行為や不法行為とみなされるなら、当然、離婚や慰謝料の請求も可能だろう。ただし、「立証」については、同性相手ゆえの困難さもあるようだ。


「たとえば妻が別の女性と旅行に行ったとしても、『友だちと旅行に行っただけ』と言えば通常は怪しまれません。


そうした立証の問題さえクリアできるのであれば、配偶者が『同性の相手』と不倫した場合も、不貞行為にあたるとして離婚できる可能性、不法行為にあたるとして慰謝料請求が認められる可能性はあると思います」


同性相手だからといって、不倫行為はやはり許されるものではなさそうだ。わが国の現行の法制度では、同性愛者の権利が必ずしも確立されていない面がある。しかし、少なくとも、異性との夫婦生活のなかでの不倫に関しては平等に取り扱われるようだ。


(弁護士ドットコム トピックス編集部)



【取材協力弁護士】
秋山 直人(あきやま・なおと)
2001年に弁護士登録。所属事務所は現在弁護士8名で、各種損害賠償請求、債務整理、不動産関連、契約紛争、企業法務、労働事件、離婚・相続、消費者問題等を取り扱っている。
事務所名:山崎・秋山法律事務所
事務所URL:http://www.yamaaki-law-office.com/