2013年02月27日 19:20 弁護士ドットコム
日本では、役所に婚姻届けを出す際、夫か妻のどちらか一方の名字を選ぶ「夫婦同姓」が民法で定められている。しかし、名字の選択は「個人の自由」とする意見があり、民法を改正して、夫婦それぞれが名字を選べる「選択的夫婦別姓制度」にしようという議論が長年にわたって続いている。
内閣府が2012年12月に実施した世論調査によると、「選択的夫婦別姓制度」の導入について、「現在の法律を改める必要はない」とする回答が36.4%という結果だった。次いで、「法律を改正してもかまわない」が35.5%、「通称として使えるように法律を改める」が24%、「わからない」が4.1%だった。
最近では、結婚して戸籍上の名字が変わっても、仕事では旧姓を通称として利用する習慣が広がりつつある。しかし役所に提出する公文書では、依然として「夫婦同姓」を求められている。はたして、民法を改正して「夫婦別姓」を認めるべきなのか。
弁護士ドットコムに登録している弁護士に意見を聞いた。
1.民法を改正して「選択的夫婦別姓」を認めるべき 31票
2.現行の民法を改正する必要はない 7票
3.通称として別の姓も使えるよう民法を改正すべき 5票
4.いずれでもない 2票
居林 次雄
投票:現行の民法を改正する必要はない
夫婦別姓は、時代の流れで、やがて取り入れられると思われますが、今は時期尚早でしょう。
離婚事件で感ずることですが、結婚した女性が、男性の姓に変わっている事例が多いので、離婚に当たって、その女性が旧姓に戻るかどうか、悩む女性の例が多いのです。
子供の姓を、変えることに、子供がやや大きくなってからは、子供の反対もあり、そのまま旧姓を名乗る女性もかなりあります。
夫婦同姓は、親子の同姓問題にも発展するわけです。
今のところでは、結婚に当たり、女性が、男性の姓に変わる例が多いので、離婚に際しては、旧姓に戻るのは女性に与えられた特権のような結果になっています。しかし結婚後の姓で世間に活躍している女性は、そのまま離婚後も旧姓を名乗る例が多いわけで、これに夫婦別姓を民法に取り入れると、やや混乱すると思われますので、当面、現行制度程度がよろしいのではないかと考えます。
大和 幸四郎
投票:民法を改正して「選択的夫婦別姓」を認めるべき
たしかに、夫婦別姓は子どもの姓、相続問題等、不都合な問題もあろう。しかしながら、個人の尊厳をに最高価値をおく現行憲法からすると、姓を自分のアイデインテイーとする人にも、配慮する必要があろう。そこで、選択的夫婦別姓を導入しても良いと考える。この制度を導入にしても、夫婦同姓でいたい、という人の意思は妨げられない。
岡田 晃朝
投票:民法を改正して「選択的夫婦別姓」を認めるべき
同姓でないことで、種々の不利益は生じるでしょうが、その不利益を当事者が負担する限りでは、あえて禁止する必要まではないのではないでしょうか。
法律を離れた、純粋な個人的意見としては、同姓のほうが好ましく思いますが、あえて法律で同姓以外は不可と禁止するべき事柄とは思えません。
個人の道徳観や社会観は、それぞれあるでしょうが、殊更に法律で制限しなければならないような問題ではないかと思われます。
柴田 幸正
投票:民法を改正して「選択的夫婦別姓」を認めるべき
あくまでも「選択的」なのだから、同姓が良い、という人は同姓を選べば良いだけの話ではないでしょうか。家族としての一体感が同姓によってこそ生まれるというのであれば、その一体感というのは極めて表面的に思われますし、別姓を希望する人にまで強制的に同姓を押しつける積極的な理由は見当たらないと考えます。
また、現行制度によっても、通称(旧姓)で社会活動を行うことは広く認められているのですから、戸籍上の氏を同姓に縛る必然性はないと考えます。
八坂 玄功
投票:民法を改正して「選択的夫婦別姓」を認めるべき
法的な見解というよりも個人的な経験から、夫婦別姓の導入に賛成します。
私は司法試験受験生時代に結婚しましたが、当時は妻が働いて家計を支えていたため妻の姓が変わるのは不便なので、結婚時に妻の姓を選択しました。
その後、私が司法試験に合格して司法研修所に入所した際に、私の旧姓を通称として使用を認めるよう研修所に願い出ましたが、認められませんでした。
そこで、いったん離婚し、すぐに再婚して、今度は私の姓を選択しました。
似たような経験をお持ちの方は多数いらっしゃるようです。
夫婦別姓を認めることで、このようなことは避けられます。
中尾 慎吾
投票:民法を改正して「選択的夫婦別姓」を認めるべき
夫婦別姓制度というのは、何らかの選択を強制するものではなく、あくまで選択肢を増やすに過ぎません。希望者のみが別姓を実現することが出来るのですから、特段の不都合は無いと考えています。
また、家族間の結びつきというものは、名字によって生じるものでもないでしょう。そのような形式的なものではなく、もっと実質的な部分によって家族間の結びつきが生まれるはずです。
夫婦別姓制度は、時代に沿ったふさわしい制度であると考えています。
小池 拓也
投票:民法を改正して「選択的夫婦別姓」を認めるべき
別姓にしたい、という人がいるのに、これを禁止するだけの合理的な理由はないように思います。
同姓がよい人は同姓にすればよいのですし、別姓の夫婦がいるからといって社会に迷惑がかかるとは考えがたいものがあります。
離婚の際にこどもの姓等で問題が生ずるのは、選択的別姓でも現行法でも同じことだと思います。
中嶋 正博
投票:民法を改正して「選択的夫婦別姓」を認めるべき
別姓であることによる不利益を承知で選択するのであるから、自己責任の見地からいいと思います。選択という自由の幅があれば、問題ないと思います。
現代のような多様化の時代、夫婦の形も、内縁関係を含めいろいろ形があっていいのでないでしょうか。
離婚の際問題点があるとよく言われますが、実務の積み重ねによって徐々に収斂されるのではないでしょうか。
従いまして、選択的夫婦別姓の導入には賛成です。
古金 千明
投票:民法を改正して「選択的夫婦別姓」を認めるべき
結婚(法律婚)した場合に夫婦別姓を認めない場合,夫婦別姓を選択したい人は事実上の婚姻(事実婚)しか選択肢がありません。
しかし,事実婚を選択した場合,法律婚では認められる制度(相続権,税法上の控除等)の適用がないという不利益を甘受しなければなりません。
夫婦別姓であるために事実婚を選択せざるを得ない人に対して,そこまで制度上の不利益を強いる特別な合理性はないと考えます。
もちろん,選択的夫婦別姓を認めたときに,子供がどちらの姓を選択するのか(当初は親が決めざるを得ないとしても,子供に選択権を与えるのか等)という課題はありますが,それはいずれ解決できる問題かと思います。
中島 繁樹
投票:現行の民法を改正する必要はない
夫婦別姓の最大の難点は子供の姓と父または母の姓とが異なってしまうというところにあります。子供と親との関係において父親と母親とで子供との距離が異なるのは好ましいことではありません。法律婚が事実婚と異なるのはこの夫婦同姓というところがポイントです。現状以上に法律婚を事実婚に近づけるのは適切であるとは思えません。
梅村 正和
投票:いずれでもない
まず夫婦別姓というネーミングがミスリード。
これでは、夫婦は別姓にすべきというイデオロギー?に支配された
制度のように見える。
むしろ、現在の規定では、
夫婦の一方が姓を変更することを強制されているので、
ある意味、自分自身のアイデンティティの柱でもある「姓」を
法律によって強制されていることの方がおかしいともいえる。
子供に対する影響などの否定的な理由については、
あまり根拠がない。
夫婦が離婚して、子供の姓が夫婦の一方と異なる事態になったから
といって、
その親と子の関係が断絶してしまうわけではない。
親と子の絆は、「姓」が結んでいるのではなく、もっと精神的なもの。
民法が夫婦の一方に姓をあわせろとしているのも、
子供のためを思って、そのように規定しているわけではない。
一つは、戸籍の管理のしやすさのためという理由。
もう一つは、GHQとの関係で、家制度を残すことは出来なくなったが、
家制度にこだわる政治家その他の人々による
夫婦の姓を統一するように義務づければ、婿養子の場合を除いて、
皆、妻が夫の姓に変えるだろうということを見越したという理由。
と色々述べてきましたが、私にとって姓をどうするという事柄は
非常に重要度が低く、(たとえ私の子が全く違う姓になったとしても
私と子供の絆は変わらない)
したがって、夫婦別姓を採用するかどうかということに関して言えば、
はっきり言って、どっちでも良いです。
高橋 優
投票:民法を改正して「選択的夫婦別姓」を認めるべき
子供のことを考えた際に、夫婦同姓の方が良いのではないかという思いはあります。
しかし、必ずしも別姓だから悪影響が生じるという訳ではないこと、同姓とするか別姓とするかはあくまで「選択」的なものであることからすると、別姓としたいという一定の需要がある以上は、別姓を選択出来るように改正しても良いのではないかと思います。
松島 達弥
投票:いずれでもない
夫婦別姓はそれを求める民意が形成されているのであれば、選択肢として当然認められて然るべきではあるものの、そもそも、どの程度の人々がそれを求めているのか全く不明である。
すくなくとも、私の周囲ではあまり聞かない。
現在では結論を出すどころが、基本的な議論を行うほどにまで民意が形成されていないように思われる。
今回のアンケートに回答した45人の弁護士のうち31人が、<民法を改正して「選択的夫婦別姓」を認めるべき>と回答した。いわゆる、「選択的夫婦別姓」を支持する意見が7割近くを占める結果となった。
次いで多かったのが、<現行の民法を改正する必要はない>という意見で、約15%の7人が支持した。残りは、<通称として別の姓も使えるよう民法を改正すべき>という意見が5人、<いずれでもない>が2人となった。
「選択的夫婦別姓」を支持する意見が圧倒的に多かったのは、「個人の尊厳」に至上価値をおく日本国憲法の精神が背景にあるようだ。その根拠としては、「あえて法律で同姓以外は不可と禁止する事柄ではない」「選択的夫婦別姓を導入しても、夫婦同姓を求める人の意思は妨げられない」という主旨の理由をあげる弁護士が多かった。
完全ではないとはいえ、女性の社会進出が増えつつある昨今、事実婚などを含めた夫婦・家族のありかたも多様化してきている。しかしながら、内閣府の世論調査でも、「選択的夫婦別姓」について賛成と反対が拮抗したように、まだ民意が形成されていないようにも思われる。国民的な議論が深まるのはこれからだと言えるだろう。