2013年02月26日 17:30 弁護士ドットコム
そろそろ春がやってくるが、大学入学や就職、転勤などで「引越し」が多くなるシーズンだ。学生や新社会人など、初めて賃貸契約を結ぶというひとも多いだろう。下見を重ねてやっと見つけた満足のいく部屋、入居中のトラブルは避けたいところだ。
賃料や初期費用はもちろん、築年数や近隣の環境などは、多くのひとが下見などの段階で確認するだろう。当然、仲介業者や大家などから様々な説明も受ける。それもあって、部屋を決めていざ契約、という段階では契約書自体の確認がおろそかになりがちだ。そこに、入居中のトラブルにつながる落とし穴が隠されている。
たとえば部屋にもともとついていたエアコンが壊れた場合、それを修理するのは部屋を借りてエアコンを使っている側、つまり借主の責任になるのだろうか。それとも、貸す側である貸主の責任だろうか。
このような、部屋に付帯していた設備の修理に関してはトラブルが起こりやすく、賃貸住宅について東京都都市整備局に寄せられる相談の件数でも上位となっている。そこで、エアコンなどの「付帯設備」に関するトラブルを未然に防ぐために何が大切なのか、田沢剛弁護士に聞いてみた。
●「大修繕」は貸主負担、「小修繕」は借主負担というのが一般的
「エアコンが故障して使えなくなってしまった場合、その修理には、ある程度の費用がかかってしまいます。しかし、自分で使う以上は自分で修理するのが当然だとか、大家さんに請求するのは気が引けるなどといって、本来であれば負担する必要のなかった費用まで、自ら負担してしまう人が多いのではないでしょうか」
では、エアコンの修理費は、貸主と借主のどちらが負担すべきものなのだろう。
「エアコンのような部屋の付帯設備の修理費用を借主が負担するのか、貸主が負担するのかについては,契約書で確かめてみる必要があります」
つまり、どちらが修繕費を負担するのかは、原則として契約で決まることになる。ただ、一般的には「比較的短期間で消耗し、修繕費用も少額で済む『小修繕』については、借主が負担し、この範囲を超える『大修繕』については、貸主が負担するものとされています」という。
●契約時に「修繕義務の範囲」をきちんと確認しておこう
もし「大修繕」についてまで、借主が負担するような内容の契約なのだとしたら、「貸主は自らの負担を避けるために、借主の無知や弱い立場であることにつけ込み、本来であれば必要のない負担をさせようとしていることになります」と田沢弁護士は指摘する。
「したがって、費用負担をめぐってのトラブルを避けるためにも、契約の際には、借主の修繕義務の範囲がどうなっているのか、よく確認したほうがよいということになります」
また、実際に入居したあとで何かの設備が故障した場合、契約書で「貸主が修繕義務を負う」とされているのであれば、気兼ねなく不動産仲介業者を通して貸主に請求すればよいという。「この点の対応をきちんとしてくれるかどうかでも、その不動産仲介業者がまともな業者かどうか分かります」
最後に、家を借りるときの参考になる資料として、田沢弁護士は、東京都都市整備局が作成した「賃貸住宅トラブル防止ガイドライン」をあげていた。
契約時にきちんと確認しておけば、修繕費用も気兼ねすることなく請求できるというわけだが、契約書だけではわかりにくい場合もあるので、わからない点はその場でしっかり質問することも大事だ。契約に至るまでに不明な点は解消し、貸主と信頼関係を構築できていれば、仮に設備の故障など不慮の事態が起こっても円滑に解決できるだろう。
(弁護士ドットコム トピックス編集部)
【取材協力弁護士】
田沢 剛(たざわ・たけし)
1967年、大阪府四条畷市生まれ。94年に裁判官任官(名古屋地方裁判所)。以降、広島地方・家庭裁判所福山支部、横浜地方裁判所勤務を経て、02年に弁護士登録。相模原で開業後,新横浜へ事務所を移転。得意案件は倒産処理、交通事故(被害者側)などの一般民事。趣味は、テニス、バレーボール。
事務所名:新横浜アーバン・クリエイト法律事務所
事務所URL:http://www.uc-law.jp