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「自民・憲法改正案は個人の権利を損なう」 明大・レペタ特任教授が懸念示す

2013年02月24日 22:40  弁護士ドットコム

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「法廷でメモする権利」に関する憲法訴訟の原告としても知られる法学者のローレンス・レペタ明治大学特任教授が2013年2月21日、東京・有楽町の外国特派員協会で記者会見を行い、安倍晋三首相が実現に意欲をみせる「憲法改正」の問題点について語った。レペタ教授は、自民党の憲法改正案について「国民に対する国家権力がより強固になり、個人の権利保護が損なわれる」と懸念を示した。


憲法改正を党是としてきた自民党は政権交代前の昨年4月28日、「新たな日本にふさわしい」と位置付けた憲法改正案を発表した。改正案は、全体で11章、110カ条の構成。前文の全てが書き換えられており、主要な改正点として、国旗・国歌の規定、自衛権の明記や緊急事態条項の新設、憲法改正発議要件の緩和などがある。


●「民主主義国家の憲法は、国家権力を制限するもの」


レペタ教授は、この改正案に強い危機感を示している。改正案が「基本的人権の本質」を規定する憲法97条を削除している点に着目し、「国民に新たな義務を課すため」と指摘。具体例として、国旗や国歌、憲法を尊重する義務を盛り込んだ条文(改正案3条と102条)が新設されたことなどをあげた。また、「何人も、個人に関する情報を不当に取得し、保有し、又は利用してはならない」という文言が付け加えられた改正案19条の2について、「民主主義国家の憲法は、国家権力を制限するもので、国民の権利を制限するものではない」と批判した。


さらに、改正案で新設された98条の「緊急事態の宣言」について、「武力攻撃、内乱等による社会秩序の混乱」という条文を示し、「この『等』という文字の意味は広範で、何が含まれているかわからない」と指摘。「このような表現が使われる憲法は見たことがない」と苦言を呈した。さらに、改正案にたびたび「公の秩序」という文言が加わっている点について、「公の秩序が何を意味するかは定義がない」と述べ、国家権力が恣意的に介入する可能性について懸念を示した。


安倍首相は、憲法の改正手続を規定した96条から改正に着手する意向を示している。レペタ教授は「96条が改正されると、簡単により多くのルールを改正することができるようになる」と指摘。自民党案が承認されれば「国民に対する国家権力がより強固になり、個人の権利保護が損なわれる」として、「人権の保護や政府の責任を拡大する世界的な動向と逆行することになるだろう」と警鐘を鳴らした。


(弁護士ドットコム トピックス編集部)