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「恋愛スキャンダル」続出のAKB48 ファンは「慰謝料」を請求できるか?

2013年02月15日 17:50  弁護士ドットコム

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AKB48メンバーの恋愛スキャンダルが相次いでいる。「お泊り愛」が報道された峯岸みなみさんが坊主頭で謝罪し、世間をにぎわしたかと思えば、続けざまに柏木由紀さんの「深夜合コン」が報道された。


うら若き女性が異性に対し恋愛感情を抱くのはごく自然のことだろう。しかし、問題はAKB48に「恋愛禁止」のルールがあるということだ。AKB48の熱烈なファンの中には、彼女たちがこのルールを遵守していると信じて、応援している人も少なくないようだ。


柏木さんのスキャンダル発覚後、あるファンはCDなどのグッズを燃やしている画像をインターネットで公表して話題を集めた。ファンの中には、少なからず精神的苦痛を感じた人もいるだろう。


このように精神的なショックを受けたAKB48のファンは、恋愛スキャンダルが発覚したメンバーに対して、「信じていたのに裏切られた」として慰謝料を請求することができるのだろうか。好川久治弁護士に話を聞いた。


■「恋愛禁止」はAKBのグループ内部のルール


「AKB48メンバーとファンとの間には、直接の契約関係はありませんので、ファンがメンバーに対して精神的損害の慰謝料を請求する根拠として考えられるのは、不法行為にもとづく損害賠償請求(民法709条)ということになります」


まず、このように説明したうえで、好川弁護士はどのような場合に「不法行為」といえるのかについて、4つの条件をあげる。


「不法行為の成立には、(1)メンバーの故意または過失、(2)ファンの権利または法律上保護される利益の侵害、(3)(精神的)損害の発生、(4)1と3の間の相当因果関係の存在が必要です。このうち、今回問題となるのは(2)の要件です」


つまり、ファンの損害賠償請求が認められるか否かは、ファンの「権利または法律上保護される利益」が侵害されたといえるかどうかで決まるということだ。好川弁護士は次のように続ける。


「『恋愛禁止』は、プロデューサーの秋元康氏が、AKB48メンバーに守らせているルールのようですが、これはあくまでAKB48というグループ内部を規律するルールですので、AKB48のメンバーが直接ファンに対して法的義務を負うものではありません。したがって、メンバーとファンとの間には、法的な義務違反によって『権利または法律上保護される利益』を侵害された、という関係がそもそも存在しません」


すなわち、「恋愛禁止」のルールはあくまで内規であって、外部の人間に対する法的な義務とまではいえない。そのため、損害賠償請求に必要な不法行為の成立要件は満たしていないというわけだ。


■「恋愛禁止」への期待は「法律上保護される利益」とはいえない


「確かに、ファンがAKB48メンバーに対して、『恋愛や合コンをして欲しくないという期待』を持っていることは理解できますが、これはあくまでも期待であって、社会通念上、慰謝料請求が可能となる『法律上保護される利益』とまでは言えません」


このように述べたうえで、好川弁護士は次のように指摘している。


「夫婦や婚約したカップルの一方が他方に対して貞操義務(浮気をしない義務)を負うことは一般に良く知られていることですが、夫婦や婚約したカップルの間ですら、(パートナー以外との)『恋愛や合コン』が直ちに不法行為となり慰謝料を請求できるわけではありません。ましてや、アイドルとファンとの間で、『恋愛や合コン』をしたことを理由に慰謝料請求が認められないことは、容易に理解できることでしょう。


もちろん、AKB48メンバーは、総選挙によってファンから選ばれ、恋愛禁止を公言しているアイドルグループのメンバーですから、ファンの信頼を損ねてしまったことについて批判を浴びることはやむを得ません。しかし、これはあくまで道義的な責任の問題です」


どうやらAKB48のファンが恋愛スキャンダルで心を傷つけられたとしても、メンバーに慰謝料を請求するのは難しいようだ。傷ついた心は、AKBの失恋ソング「泣きながら微笑んで」でも聴いて、癒すしかないのかもしれない。


(弁護士ドットコムトピックス編集部)



【取材協力弁護士】
好川 久治(よしかわ・ひさじ)
1969年、奈良県生まれ。2000年に弁護士登録(東京弁護士会)。大手保険会社勤務を経て弁護士に。東京を拠点に活動。家事事件から倒産事件、交通事故、労働問題、企業法務まで幅広く業務をこなす。趣味はモータースポーツ。
事務所名:ヒューマンネットワーク中村総合法律事務所
事務所URL:http://www.hnns-law.jp/