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トラブルがあいついだ787 「飛行機遅延」で仕事に遅れたら賠償してもらえるか?

2013年02月14日 14:30  弁護士ドットコム

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米航空大手ボーイング社の最新型旅客機「787」でトラブルがあいついでいる。2013年1月には、宇部から東京に向かっていた全日空の787がバッテリーから煙が出たために、高松空港に緊急着陸した。同月7日には、ボストンの空港で、日本航空の機体で同じバッテリーから発火し、米航空当局がすべての機体の運航停止を求める事態となっている。


787については、原因究明のための調査が進められているが、このような飛行機の緊急着陸などで、到着時間が遅れ、仕事等に支障が出た場合、航空会社に賠償してもらえるだろうか? 木下慎也弁護士に聞いた。


●運送約款で「到着時刻は保証ではない」と規定


飛行機の乗客はチケットを申し込む際、航空会社と運送契約を結ぶことになっている。木下弁護士によると、航空会社はこの運送契約で「目的地まで安全に乗客を運ぶ義務を負うと同時に、“到着時刻を遵守”する義務も負っている」という。なぜなら、「乗客は目的地に着くなら何時でも良いわけではなく、到着時刻を見込んで運送契約を申込むから」だ。


では、到着の遅れによる損害は、賠償してもらえるのだろうか? 木下弁護士は「NO」と答える。


「航空会社は、“運送約款”つまり、契約の細かい取決め条項を作ることで、その義務の内容を変更しています。ある航空会社の国内線約款は『緊急着陸を含めて、悪天候などやむを得ない場合の遅延による損害を賠償する責任は負わない』と定めています。さらに、国際線約款に至っては『到着時刻はあくまでも“予定”であって“保証”ではない』と定めています」


●航空会社は性質上、鉄道よりも優遇されている


つまり、航空会社は本来、到着時刻を守る義務があるが、約款で「遅延しても損害賠償責任は負わない」とか、「到着時間を保証しない」と決めているのだ。ちなみに、鉄道の場合は、「各約款で定めた時間よりも遅延したときには運賃の払い戻しを予定している」という。


「飛行機のように長距離になるほど、乗客は飛行機以外の代替手段が取れないことが多いため、乗客には、遅延による損害賠償請求は難しいことを“あらかじめ了解”してもらった形で、運送契約を申込んでもらっているのです」


それを踏まえて、木下弁護士は次のように指摘する。


「航空会社は到着時刻の遅れに関しては、その性質上、鉄道など他の交通機関よりも優遇されていますから、安全に関しては、しっかりとその義務を全うしていただきたいですね」


787の場合も緊急着陸で遅延した損害の賠償は難しいようだが、事故原因を徹底的に究明して、安全については完璧を期してもらいたいものだ。


(弁護士ドットコム トピックス編集部)