2013年02月06日 15:30 弁護士ドットコム
警察や銀行の呼びかけにもかかわらず、あとを絶たない振り込め詐欺。2013年1月末にも、振り込め詐欺の現金受け取り役である「受け子」のグループが摘発されたばかりだ。そのグループは、昨年7月から都内などの約450人から現金数億円をだまし取ったとみられているという。
では、警察が振り込め詐欺の犯人を逮捕すれば、だまし取られた金は警察が取り返してくれるのだろうか。被害者が振り込んでしまった金を取り戻すには、どうすればいいのだろうか。佐賀県弁護士会・消費者問題対策委員会の委員長をつとめた経験もある大和幸四郎弁護士に聞いた。
●「振り込め詐欺救済法」にもとづいて被害金の支払いを申請する
大和弁護士によると「振り込め詐欺救済法」という法律があり、それによる救済が考えられるという。「これは2007年12月に制定され、振り込め詐欺等の被害者に対する被害回復分配金の支払手続等を定める法律です」
「本件のような場合は、すでに預金口座の取引停止措置(いわゆる口座の凍結手続き)がとられていると思いますので、その後の手続きの概略を説明したいと思います」として、大和弁護士は次のように説明する。
「被害者がお金を振り込んでしまった預金口座の取引停止措置がとられた後、預金保険機構のホームページで『預金口座の消滅手続きの公告』がなされます。これが完了すると、被害者のために『分配金の公告』があり、被害者から支払の申請を受け付けるようになります」
さらに、振込先の金融機関に被害を申し出た被害者には、支払手続きのときに金融機関から個別に連絡がいくという。したがって、「被害を受けた方は、振り込み先の金融機関にお問い合わせください」ということだ。
ここで注意しなければいけないのは、「申請しないと分配金を受け取ることができない」ということである。「被害にあわれた方は、必ず支払の申請をするようにしてください」と大和弁護士は述べている。つまり、警察が率先してお金を取り戻してくれるというわけではないのだ。
この支払申請は、申請書に必要な資料を添付したうえで振込先に提出するといった「簡単な手続き」だそうだが、振り込め詐欺にあってしまった人には難しい場合もあるだろう。「そのようなときは代理人による申請もできますので、よくわからない方は弁護士に手続きを委任することも検討されたほうがよいでしょう」ということだ。
●被害金額に応じて、凍結した預金口座から分配される
支払の申請が行われたあと、支払額の確定手続きが実施される。もし凍結した預金口座の残高が、支払申請の総額よりも少ない場合、どのように分配されるのだろうか。「そのような場合は、預金残高を各人の被害額で按分した額となります」と大和弁護士は説明する。
「たとえば、凍結した預金口座の残高が750万円で、被害者は、被害額1000万円のAさんと被害額500万円のBさんの2人という場合(合計1500万円)、分配率は50%ということになり、Aさんに500万円、Bさんに250万円が支払われるということになります」
最後に大和弁護士が「気をつけてほしい」というのが、「振り込め詐欺の救済」を口実にした詐欺だ。この「振り込め詐欺救済法」の手続きを逆手にとって、言い寄ってくる詐欺もあるというのだ。
「振り込め詐欺救済法の手続きにおいて、ATMの操作だけで預金口座にお金が振り込まれることはありません。『振り込め詐欺の救済』を名乗る詐欺にもご注意ください!」と呼びかけている。
(弁護士ドットコム トピックス編集部)
【取材協力弁護士】
大和 幸四郎(やまと・こうしろう)
佐賀県弁護士会。2010年4月~2012年3月、佐賀県弁護士会・消費者問題対策委員会委員長。佐賀大学経済学部非常勤講師。借金問題、刑事・少年事件など実績多数。元「西鉄高速バスジャック事件」付添人。
事務所名:武雄法律事務所
事務所URL:http://www.takeohouritu.jp/