2013年01月24日 18:40 弁護士ドットコム
お笑い芸人が出演するバラエティ番組では、しばしば番組を盛り上げるために男性芸人が下半身を露出するなどの、際どい芸が披露される。
局部が映ってしまう場合はモザイクがかけられ、視聴者の目には触れないような配慮がされるが、視聴者の中には楽しく見ていたのに気分を害したという人もいることだろう。また、筆者は以前、男性芸人が共演者の女性芸人の胸を後ろからわしづかみにし、揉んでいる映像を目撃したこともある。
これが一般社会であったらどうだろうか。例えば下半身を露出させるといった行為は、公然わいせつ罪として通報されることだろう。しかしテレビの場合は逮捕まで至った話という話は聞いた事がない。それでは不愉快に思った視聴者が警察に通報した場合、このような行為を行なった芸人は法的な罰則を受けることになるのか。広瀬めぐみ弁護士に話を聞いた。
●モザイクがなかったら、公然わいせつ罪として露出した本人のみならずテレビ局も責任を問われる
「テレビで芸人さんが下半身を露出し、モザイクがなかったら、当然に公然わいせつ罪として露出した本人のみならず、放映したテレビ局の責任者も逮捕される可能性があると思います。」
「鍵は正にモザイクで、もし下半身がばっちり映っていれば、露出した本人はもちろんのこと、放映したテレビ局も責任を問われることになるでしょう。」
ちなみにモザイクがかかっていれば、いくら視聴者が不快だと思っても、公然わいせつ罪には問われないそうだ。
●胸のわしづかみは、強制わいせつ罪が成立する可能性も
「一方、男性芸人が女性芸人の胸をわしづかみにしたら、これは微妙です。もし女性芸人がこの行為を了承していなかった場合、女性芸人に対する強制わいせつ罪が成立する可能性もあるでしょうし、視聴者に対しては、二人の行為が視聴者の性的羞恥心を害したとして、公然わいせつ罪が成立する可能性もあると考えます。」
●国や時代によって、わいせつの対象範囲は変化する
「何がわいせつにあたるかは、国や時代によって異なります。日本は欧米に比べ、社会的秩序をより重んじて、表現の自由を制限する傾向にあります。ここまでならいい、という線引きは難しく、その時々の社会通念に照らして考えていく必要があります。」
「ヘア写真を考えればすぐにわかりますが、社会の変化に伴い、以前は許されなかった行為が許されるようになることもありますし、その反対もあり得ます。社会風俗は社会を映す鏡と言えそうです。」
テレビの話ではないが、先日にはAKB48の河西智美さんの写真集が児童ポルノ禁止法に抵触するのではと大きな物議を醸し、芸能人やメディア側の感覚と一般人の感覚の違いを指摘する声も上がっていた。
視聴者の注目を集めることは重要だが、行き過ぎた露出行為は反感を買いかねず、法的な問題にもなり得るので、注意してもらいたいものである。
(弁護士ドットコム トピックス編集部)
【取材協力弁護士】
広瀬 めぐみ(ひろせ・めぐみ)
家事調停官4年勤務の経験から家事事件に精通し、家事事件手続等につき弁護士会等で講師多数。専門家としての知識・見識と共に、依頼者から安心してお任せ頂ける優しさを心がけている。一般民事事件・刑事も扱う
事務所名:広瀬めぐみ法律事務所
事務所URL:http://www.hirose-law.jp